相続でお悩みのかたへ / 会社経営者(社長・役員)の相続
相続でお悩みのかたへ / 会社経営者(社長・役員)の相続 ポイント解説
1. 会社経営者(社長・役員)の相続で注意すべきポイント
会社経営者が亡くなった場合、相続人にとっては個人の財産だけでなく、会社も相続財産となります。
会社の財産と個人の財産が入り混じっていて判断が難しいものや、通常の相続にプラスして事業継承についても考えなければならず、経営者の死亡が突然だった場合にはかなりの混乱を招くこともあります。
会社の評価が高額になり、予想外の相続税を課せられる場合もあります。
また、会社の規定により死亡退職金が支払われる場合は、これも相続財産となります。
死亡退職金には非課税枠がありますが、一部は相続税の課税対象となります。
[ 退職手当金等の非課税限度額 ] 非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
この計算について、具体例で見てみましょう。
[ 参考例 ] 設定 : 妻と子ども2人を持つ被相続人(死亡者)の場合
※二男は相続を放棄しているのに、課税対象となっているのは放棄がなかったとみなして計算されるためです。
なお、生前に退職金を受領する場合は、その時点で所得税と住民税が課税されて清算されるため、相続税は課税されません。
2. 株式会社の場合
被相続人(亡くなった人)が株式会社の経営者だった場合、株式も相続財産となります。
会社が上場していない場合は、評価を行います。
以下に相続税の評価額一覧を提示しますが、非上場株式の評価は複雑なので、専門家委への依頼がおすすめです。
株主の態様 | 会社区分 | 評価方式 | |||
---|---|---|---|---|---|
支配株主 (同族株主等) |
一般の評価会社 | 大会社 | 類似業種比準方式 | 純資産価格とのいずれか少ない金額 | |
中会社 | 大 | 類似業種比準価格 × 0.90 + 純資産価格(※1) × 0.10 |
|||
中 | 類似業種比準価格 × 0.75 + 純資産価格(※1) × 0.25 |
||||
小 | 類似業種比準価格 × 0.60 + 純資産価格(※1) × 0.40 |
||||
小会社 | 類似業種比準価格 × 0.50 + 純資産価格(※1) × 0.50 |
||||
特定の評価価格 | 比準要素数1の会社(※2) | 類似業種比準価格 × 0.25 + 純資産価格(※1) × 0.75 |
|||
株式保有特定会社 | S1 + S2方式 | ||||
土地保有特定会社 | 純資産価格方式 | ||||
開業後3年未満の会社 | |||||
比準要素数0の会社(※3) | |||||
開業前・休業中の会社 | |||||
清算中の会社 | 清算分配見込額の複利現価方式 | ||||
少数株主 | 一般の評価会社 | 配当還元方式 (特例的評価方式) |
|||
特定の 評価価格 |
その他の特定会社 | ||||
開業前・休業中の会社 | 純資産価格方式 | ||||
清算中の会社 | 清算分配見込額の複利現価方式 |
非上場株式会社の相続税評価はかなり高額になるケースもあります。
創業からの年数が長く、利益の蓄積が多い会社や、所有している不動産の価値が購入時よりも上がっている場合などは、資産価値が高くなると考えられます。
被相続人(死亡した経営者もしくは役員)の保有株式が多かった場合は、その相続によって会社の経営権が移ることもありうる状態であり、会社の経営や存続にも影響を与えます。
定款に累積投票制度の排除や株式の譲渡制限条項を定めておくとよいでしょう。
なお、会社への貸付金・借入金も、相続財産・相続債務です。
会社の借り入れの際の連帯保証人になっていた場合は、それも相続債務です。
場合によっては相続放棄や限定承認を申し立てることによって債務を相続しない選択も可能ですが、事前に会社の状況を把握していなかった場合は、混乱を招くことになりますので熟考が必要です。
3. 会社経営者・役員の相続対策
スムーズな相続、スムーズな事業継承のためには、これらを踏まえて、生前に準備しておくことが大切です。
[ 経営者が生前に準備しておくこと ]
- 会社の財産と個人の財産を区別しておく
- 相続人となりうる人に、債務の存在と内容を伝えておく
- 会社の安定を考え、事業継承を検討しておく
- 遺言書を用意する
会社の財産と個人の財産の区別
会社のために個人のお金で支払ったものは、会社の貸付金として計上する、などです。
基本的なことですが、日常的に会社と個人とを区別して考え、きちんと処理しておきましょう。
債務の存在と内容を相続人に伝えておく
会社の借り入れであっても、その連帯保証人になっていた場合は債務として相続することになります。
債務を背負うという一部だけを見れば、誰でも避けたいものです。
しかし実際には計画的な借り入れであり、将来的には利益につながるものかもしれません。
逆に、赤字が続き、倒産を考えていたのかもしれません。
何も知らずに突然相続するとなった場合、すぐに正しい判断するのは難しいものです。
生前に相続人となりうる人に対してきちんと債務の存在を伝え、説明をしておくことで、相続人は正しい選択が可能となります。
事業継承を検討しておく
株式の相続は、財産の問題とは別に、会社の経営権がかかっています。
中小企業の場合は経営者がほとんどの株式を所有しているなど、会社の経営を行う人物に株式を集約させるケースが多くなっていますが、相続によりそれが分散してしまう可能性も考えられます。
自分の子どもに跡を継がせたいと考えていても、株式を譲るためには後継者が経営者から株式を買い取る必要があり、株式の評価が高ければ多額の現金が必要となります。
生前贈与という手段もありますが、年間110万円以上の贈与は課税対象です。
また、役員報酬を増額しても、年間報酬が多くなればなるほど支払う税金も多くなり、思うようには手元に残せないのが現実です。
遺言書を用意する
せっかく計画した事業継承プランも、遺言書なくしてはその通りにならないこともしばしばあります。
遺言書は何度でも書き換えが可能です。
また、遺言書を用意することで過去を振り返ったり、現状を把握したり、将来像を見つけたりすることができ、その後の経営や人生に役立つことも多いものです。
ぜひ遺言書を活用していただきたいと思います。
会社経営者・役員の相続についてご案内いたしましたが、ご不明な点・ご相談等がございましたら、お気軽に吉澤会計事務所までお問い合わせください。
税理士法人吉澤会計事務所
長野県松本市蟻ケ崎1-3-6
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1. 注意すべきポイント
2. 株式会社の場合
3. 会社経営者・役員の相続対策
では、ひとつずつ解説していきましょう。